レゴ® WeDo 2.0基本セット

引く力

物の運動における平衡力と不平衡力の作用について学びます。

120分以上
中級
小学校低・中学年
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1. 準備

(30分)

•「 授業の運営」の章に、記載された共通準備項目を確認する。
• プロジェクトのテキストを読み、やらなければならないことをよく理解する。
• プロジェクトの導入方法を定める。 WeDo 2.0 ソフトウェアに収録 されたビデオか、自分で用意した教材を使う。
• 発表と記録に移るパラメーターとなる、プロジェクトの最終成果 を定める。
• 目標を達成する時間が十分にあることを確認する。

2. 調べる

(30-60分)

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導入ビデオを利用して、以下の内容について子どもたちに考えさせ、話し合いをしてみましょう。

導入ビデオ
人間が、初めて大きな物体を動かそうとしたのはずっと昔のことです。古代文明から現代にかけて、物を押したり引っ張ったりするための様々な道具が発明されてきました。

1.何かを引っ張っても動かせない時、その物体は反対の方向にそれ 以上の強さで引っ張られている。
2.物が動く時、動いている方向に働く力が逆方向に働く力よりも大 きい。
3.地球上ではこの仕組みに摩擦も関係している。
4.摩擦力が低い場所では、同じ重さの物体でも、凹凸のある場所よりも簡単に物を引っ張ることができる。

力と運動の関係は、17 世紀にアイザック・ニュートンによって解明されました。彼が定義した物理法則は、皆さんも毎日体験しています。

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話し合いのための質問
1.物を動かすには、どのような方法がありますか?
引っ張る、押すなど、何らかの力を加えます。
2.摩擦とは、何か説明できますか? 普通の面よりも、滑りやすい面 に置いてある物の方が、簡単に動かせますか?
これは、摩擦に関する質問です。凹凸のある面よりも滑りやすい 面に置いてある方が、物を簡単に動かすことができます。その物 の質量によっては、滑りやすい場所では、押したり、引っ張った りがしづらくなるため、動かすのが難しくなる場合もあります。
3.ある方向の引く力が別の方向よりも強いとどうなるか予測してみ ましょう。
この質問に対する子どもたちの答えは、学習前の子どもたち自身 の予測に基づいています。つまり、この時点では、不正解である 場合があります。授業の後には、引く力、または押す力が一番大きい方向に、物が動くという事実を、説明できるようになってい るはずです。
4.つり合った力と、物が動くという現象との間に、どのような関係 があるか推測できますか?
つり合っていない力は、その物体の動作に変化を生じさせます(加速、減速など)。

子どもたちに、自分が見つけたアイディアを記録してみんなと共有するためのツールを選んでもらいましょう。文章、動画、画像、スケッチブックといったような、創造力を働かせる媒体を選ぶよう促してください。

3. 組み立てる

(45–60分)

プルロボットの組み立てと、プログラミング
組み立て説明書に従って、プルロボットを作ります。プルロボットは、バスケットに入れられた物体を、引っ張るロボットです。木やカーペットなど、どのような材質の表面で、試験を行っても構いません。ただし、プロジェクト全体を通して、同じ材質の上で試験を行うようにしてください。

1. プルロボットを組み立てる。
このプロジェクトで使うウォブルモジュールには、ベベルギア(傘歯車)を使用します。ベベルギアは、回転軸を、縦から横に変化させて、モーターの動きを車輪に伝えるパーツです。
バスケットには、摩擦を減らすために、スライディングブロックを用いています。

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2. ロボットに、引く動作をプログラミングする。
このプログラムは、3、2、1 と表示した後に、モーターを出力 10 で2秒間回転させます。

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おすすめ
調査に取り組む前に、子どもたちが、プログラムの仕組みを、完全に理解できるよう、パラメーターを変更する時間を設けてみてください。

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プルロボットを試験する
このモデルを使って、引く力についての調査を実施します。

1.小さなものから始めて、ロボットが動かなくなるまで、バスケットに入れる物をだんだん重くしていく調査を行う。
普通の表面上で試験した場合、ロボットは、約 300g の重りで動かなくなります。何をバスケットに入れても構いませんが、この調査の目的は、力がつり合ったとき(平衡点)を見つけることにあるため、重すぎない物を選んでください。ロボットが、動かなくなったら、力がつり合った状態(平衡力)を達成できたことを意味します。力の方向性を表すために、矢印を使ってもよいでしょう。

バスケットに、小さなタイヤを入れても構いません。こうすると、バスケット側の摩擦が大きくなります。

2.ブロックの量は変えず、大きなタイヤをモデルに取り付け、どのような結果になるか試験する。
子どもたちに、プルロボットにタイヤを取り付けさせます。これによって、ロボットのタイヤと床面との摩擦が大きくなり、ロボットの引く力が、大きくなります。それまで、保たれていた力のバランスが崩れます。

これが、引く力が、それに反する力よりも、大きくなるときに、物体が動くという考えを、裏付ける証拠となります。

3.タイヤをつけたモデルが、引くことのできる一番重い物体を見つける。
この最後のステップの結果は、試験を行っている床面の材質によって異なります。

追加の調査
オプションとして、プロジェクト内にある「追加の調査」のセクションを使って、発展課題を出すこともできます。「調査」セクションを、さらに発展させた、年上の子どもたちや、学習が進んでいる子どもたち向 けの内容となっている点に注意してください。

試験に使っているプルロボットには、モーターの回転によって、生じた動作の方向を変えるベベルギアが使われています。このギアには、力を大きく増幅させる機能はありません。

1.別のプルロボットを組み立てる。
子どもたちに、プルロボットの別のデザインを、考えさせてみましょう。自分たちでモデルを組み立てさせ、最初のプルロボットと同じ試験を実施して、結果を比較させます。ヒントが欲しい場合は、デザインライブラリを参考にします。

おすすめの共同作業
クラスで一番力が強いロボットを探そうチームでの試験が終わったら、ロボット同士の綱引き大会を行いましょう。
• 2 つのチームをペアにする。
• レゴ ® チェーンをつかって、ロボットの背面を連結する。
• あらかじめ、重量と質量が同じ物体を、バスケットに入れてく。
• 合図に合わせて、ロボットのエンジンをスタートさせ、前進させる。どちらの方が強いかな?

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4. 発表する

(45分以上)

記録を、完成させる
子どもたちに、様々な方法を使って、プロジェクトの記録を制作させます(以下に例を示す)。
• 試験結果の、スクリーンキャプチャをとる。
• スクリーンキャプチャと、実際の画像を比較させる。
• クラスの前で、自分たちのプロジェクトについて、解説する様子
をビデオに記録するよう促す。

おすすめ
図表形式または、集計表形式でデータを記録させることもできます。試験結果から、グラフを作成してもよいでしょう。

結果の発表
プロジェクトの最後に、調査の結果を発表させます。

発表内容を向上させるこつ:
• つり合った力(平衡力)、つり合っていない力(不平衡力)、押 す力、引く力、摩擦、重さなどの語彙を使うよう指導する。
• 力を、矢印で表すよう促す。
• 背景を交えて、説明するよう促す。
• つり合った力(平衡力)とつり合っていない力(不平衡力)が見られる実際の状況に関連付けて、プロジェクトを分析するよう促 す。
• 子どもたちの発見内容と、こういった状況との関係性について話 し合う。

プロジェクトの評価基準

以下の評価基準を、「WeDo 2.0 を使った学習評価」の章にある観察基準シートと合わせて使うこと もできます。

調べる
「調べる」では、すべての子どもたちが、話し合いへの積極的な参加、質問、回答の他、押す力、引く 力、力、摩擦といった語彙の正しい使用ができているか確認してください。

1.質問への回答、話し合いへの適切な参加、押す力と引く力という概念の適切な説明、これらが力 だという関連付けを行うことができない。
2.助けを借りて、質問への回答、話し合いへの適切な参加、力としての押す力と引く力という概念の 説明をすることができる。
3.質問に対する適切な回答、クラス全体の話し合いへの参加、力としての押す力と引く力という概 念の説明をすることができる。
4.話し合いにおいて、意見をさらに展開させ、押す力と引く力を使って力の概念を詳しく説明する ことができる。

組み立てる
「組み立てる」では、すべての子どもたちが、チームの一員として取り組み、結果の予測、「調べる」で 得た情報の活用ができているか確認してください。

1.チームの一員として作業を行い、結果を予測し、情報を活用することができない。
2.助けを借りて、チームの一員として作業を行い、調査結果の予測をすることができる。
3.指導の下に情報の収集と活用を行い、チームの一員として作業し、チームの話し合いに貢献し、 結果を予測し、調査結果の発表のための情報収集をすることができる。
4.チームの一員として作業を行い、リーダーシップを発揮し、結果予測の正当性を通し、情報に基 づいて押す力と引く力の説明をすることができる

発表する
「発表する」では、すべての子どもたちが、モデルに起こっている現象を力に関連付けて説明でき、 様々な条件で試験を行い、結果を予測でき、プロジェクトの重要な情報をまとめて、最終レポートを 作成できているか確認してください。

1.調査に関する話し合いへの参加、力の概念を使ったモデルの説明、情報を活用した最終レポートの制作をすることができない。
2.助けを借りて、力に関する話し合いへの参加、複数の試験の実施とそれに基づいた結果予測、得 られた情報の一部を活用した最終レポートの制作ができる。
3.力に関する調査についての話し合いの参加、試験から得られた情報を活用した最終レポートの 制作ができる。
4.トピックについてのクラス全体の話し合いへの積極的な参加、得られた情報と自ら発見した要素を活用した最終レポートの制作ができる。

5. このプロジェクトの特徴

プロジェクトを成功させるために、モデルの組み立てと、プログラミングについて以下のような指導を行うことを検討してください。
• モーターの使い方を、説明する。
• 簡単なプログラムストリングについて、説明する。
• 調査の実施方法を、説明する。
• 引く力や摩擦など、注目すべき要素を定義する。

また、発見した事柄の発表や、記録の方法について、具体的な基準を設けてください(チーム間で発表会を行うなど)。

追加の調査
追加の課題として、子どもたちが、作ったデザインやモデル、プログラムで実験する時間を設けましょう。こ れによって、押す力と引く力の原則について、さらに探究することができます。また、追加の調査として、ロボットの綱引き大会を行って、ロボットの力を比較するよう促してみてください。きっと盛り上がりますよ!

子どもたちがしがちな誤解
子どもたちは、物体が動いていないときには、そこに何の力も働いていないと考えてしまいがちです。ハンドブレーキをかけたまま、車を動かそうとする時を例に出して説明するとよいでしょう。車が 動いていないから何の力も働いていないと思いがちですが、この時も力は存在しています。物が静止している時は、いくつかのつり合っている力が、はたらいている状態であることが科学的に証明されています。

教師用サポート

• 力とは何か、力がどのように物を動かすか考える。
• ロボットを組み立てて、プログラミングし、それを使って、物の運動におけるつりあいのとれた力とつりあいのとれていない力について調査する。
• 力についての実験結果を記録し、発表する。

レゴ エデュケーション WeDo 2.0 基本セット
WeDo 2.0 ソフトウェアまたはプログラミングアプリ

物理分野
・ 電気の働き(第 4 学年)
・ 電気の利用(第 6 学年)
・ 摩擦、力のつりあい

工学、技術
・ プログラミング
・ 歯車 
・ モデルの製作、比較

生徒用資料

生徒用ワークシート

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